SEとエンジニアの間

この記事は僕が数年間SEとして働いてきて、SEという職業に抱いていた感覚を書く文章であって、それ以上の何かではない。

SEという仕事

SE(システムエンジニア)という単語は、和製英語だ。 海外にはSEという単語に相当する職種はない。 Software Engineerという単語はある。 Programmerという単語もある。 日本のSIerで確立された、PG→SE→PMというキャリアパスは、アメリカにもあるんだろうか? BtoBだったらあるいはあるのかもしれない。 ただ、アメリカだとシリコンバレーのIT企業が圧倒的に高給なので、そういうシステム会社はあまりいいキャリアではないだろう。

ネット上でエンジニアというワードを見ると、ちょっと引っかかるものがある。 音楽のアーティストというワードに近いものがある。 アーティストは芸術家という意味だし、エンジニアは技術者という意味なので、どちらも広義の単語だ。 芸術家の中でも音楽をやっているのならミュージシャンを名乗ったらいいし、 技術者の中でもプログラミングをしているならプログラマを名乗る方が適切だろう。 音楽の方は完全に時代の流行りでアーティストと言っているだけのような気がするが、 ネット上で日本のプログラマエンジニアがエンジニアと名乗るのは同情できる部分がある。

プログラマ、という単語のイメージが悪くなりすぎたためだ。 2000年代くらいから? なのか、 日本の派遣関連の法律の緩和によって、IT業界は外注による二次受け・三次受け……n次受けみたいなビジネスモデルが定着した。 マネジメント能力がないPMが、設計能力のないSEをまとめて、開発能力のないPGが何かを作って、とりあえず納品するのが仕事になった感じがある。 僕がいる会社はそこまで収集がつかなくなっていないが、状況はそんなに遠くないだろう。 IT業界というのはもっと自由だと思っていたが、SIerに入ると、むしろどの業種よりも封建主義的な身分制度になる。 プロパー(正社員)・協力会社・オフショアみたいな身分制度があって、プロパーの中でも役職があって、ピラミッドがある。

結局のところ、SEという仕事は、システムを扱うサラリーマンだというのが、僕の結論だ。 部署の状況によっては自分でコードを書くこともあるが、書いたところで評価されることはあまりない。 人に書かせて、それをとりまとめることが評価される。 ITバブル期にあった、プログラマはコミュ障の将来性がない連中で、 年収を上げたければSEになって、より上流工程をやるしかないみたいな世界観は、最近だと曖昧になっている。 それはGoogleとかAppleとかFacebookとか、普通にプログラマがプログラマのままガンガン利益出す会社が登場しているのが影響しているかもしれない。 ただ日本企業の売上高ランキングを今見たら、トップ100に入っているIT企業というのは、 NTTデータと楽天くらいで、両企業ともエンジニアドリブンな会社かというとちょっと違うので、 依然として日本の中でSIerというのは大きなパイを占めている。

SEという職業が担当する範囲は広い。 というかその広さも日本特有なのかもしれない。 メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用という差が、日本と海外のIT企業の採用にも現れているのかもしれない。 メンバーシップ型雇用ゆえに、日本のIT企業では、採用後にCOBOLをやることもしれないし、C#かもしれないし、 VBかもしれないし、Javaかもしれないし、AIのためのpythonかもしれない。

どの会社でもいいけれど、NTTデータの2020年卒(2020年卒!!!)の募集要項を見てみると、下記の条件だった。

❌ Unsupported block (quote)

「日本のシステムインテグレーション業界をけん引するトップSIerとして、またITで世界に新しい価値を提供している先駆者」((原文まま))のNTTデータを引用したのは意味はなく、 どの大手SIerもこんな感じの募集要項を載せているはずだと思ったので、載せた。 一応応募の段階で、採用コースというのはあるらしく、SEを希望していたのに、経理になるレベルのミスマッチは対策しているようだ。 (農学部博士課程卒に八百屋の店番はさせません!! というレベルだが……)

❌ Unsupported block (quote)

このコースを見ても、実際SEに配属された新卒が何をするのかは全くわからない、というのが重要ポイントだ。 繰り返すが、SEという仕事は、システムを扱うサラリーマンだ。 要件定義・設計したり、プログラミングしたりテストしたりだけではなく、コンサル的な仕事だったり、金まわりだったり、教育だったりという仕事も担当する。 というか僕は全部経験した。 その中で、システムに関することなら何でも屋的に動けることが期待されているのが、SEだなと思った。

エンジニア、

僕がネット上でエンジニアを名乗る人に感じていた不快感というのは、僕自身のやっている仕事へのコンプレックスの裏返しだったような気がする。 昔の記事に書いたけれど、振り返ったときに、自分が創って、残したモノがないというのは辛いものがあった。 大量のExcelのドキュメントとか説明資料とかは残したが、大して意味があるものとは思えない。 本当に価値があるモノ、あるいはそれにつながるようなモノは創れなかったし、そういう役割でもなかった。

IT業界にいない人間、あるいはWeb業界とSI業界の片方しか視界に入っていない人間には、僕が抱えていた気持ちはあまりわからないかもしれない。

ポディショントーク

別に就職前はプログラミングなんて一切やっていなかったので、 そんな人間が付け焼き刃でプログラミング学んでも追いつけるわけがないし、 SIer業界のピラミッドの中で、少しでもいいポディションを確保するために動くのが最良の手段と、人目には映るのかもしれない。

けれども、手動かしてモノつくることをしないと、自分の仕事に価値を見出すことはできなかった。 プログラミング自体は好きだ。 ただ昔から情報系にいて、真剣に勉強した人間に追いつけるとも思っていない。

結局のところ、中途半端な位置にいる。 SEとしてやっていくには、あまりにも技術的な面を追いすぎて満足できないし、エンジニアとしてやっていくには、技術が足らない。 ただ足らないものは補えばいい。 システムを管理する側から、モノを創る側に行きたいなら、立場を変えるしかない。 結局は自分が何をやりたいかで選ぶべきなのだと思う。 (了)